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【逆転】「的を得る」:「誤用説は俗説」と事実上決着へ

昨年12月発売の『三省堂国語辞典』第7版に「的を得る」が採録されました。これで「的を得る」を誤用とする説が俗説であるとほぼ確定したといえる重要な事件ですので、遅ればせながら記事を上げます。

(といっても先日頂いたコメントに付けた返信の焼き直しですが)


当ブログには2012年2月に書いて、当時、私自身その内容に確信が持てなかったために公開していない記事があるのですが、それは「的を得る」を誤用とした「国語辞典」の調査をしたものでした。


調査でわかったのは、以下に示すとおり、1982年から1997年まで15年間「的を得る」を誤用とした「国語辞典」は『三省堂国語辞典』のみだったということです。(1982年以前に誤用説を載せている辞書はありませんし、現在でも「的を得る」を誤用と載せている「国語辞典」は実は少数派です)


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「的を得る」誤用説を載せている国語辞典と掲載時期(括弧内は、誤用説が載る前の版と、その出版時期)


1982年『三省堂国語辞典』   第3版(三省堂) (第2版1974年)


1997年『現代国語例解辞典』 第2版(小学館) (初版1985年)
2002年『新選国語辞典』   第8版(小学館) (第7版2000年)
2006年『大辞林』      第3版(三省堂) (第2版1995年)
2010年『明鏡国語辞典』   第2版(大修館) (初版2002年)


※(参考)最新版でも「的を得る」誤用説を載せていない「国語辞典」
・『広辞苑』(岩波書店)・『大辞泉』(小学館)・『新明解国語辞典』(三省堂)・『岩波国語辞典』(岩波書店)・『精選国語辞典』(明治書院)・『学研現代新国語辞典』(学研)・『旺文社国語辞典』(旺文社)・『福武国語辞典』(福武書房)・『集英社国語辞典』(集英社)・『角川必携国語辞典』(角川書店)・『講談社国語辞典』(講談社)・『ベネッセ表現読解国語辞典』(ベネッセ)・『三省堂現代新国語辞典』(三省堂)
※以上、2012年2月当時
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「国語辞典」の事情に少しでも詳しい方なら皆ご存じだと思いますが、辞書の神様ともいえる見坊豪紀さんが編集した『三省堂国語辞典』の権威は極めて高いもので、その『三省堂国語辞典』が「的を得る」を「誤用である」とした影響は非常に大きなものでした。

私が見つけた範囲では、2000年以前に「的を得る」誤用説を主張した書籍や記事が、その根拠としてあげていたのも、この『三省堂国語辞典』に誤用と記載されていることでした。こうした書籍や記事がやがてテレビ番組で取り上げられ、大きな反響を呼んで2000年頃を境に全国に「的を得るは誤用」という「常識」が広まり、平成15年の文化庁調査でも「誤用の多い例」として取り上げられるに至ったと思われます。


見方を変えれば『三省堂国語辞典』に誤用の記載がなければ、根拠の薄弱な「的を得る」誤用説がこのように世間に広まることはなかったはずです。


その『三省堂国語辞典』の第7版が去年2013年12月発売になり、この新版から「的を得る」が採録立項されたのです。


「的を得る」の掲載に関して、編集者の飯間浩明さんはtwitterに「『三省堂国語辞典』第7版では、従来「誤用」とされていることばを再検証した。「◆的を得る」は「的を射る」の誤り、と従来書いていたけれど、撤回し、おわび申し上げます。」とツイートされています。(https://twitter.com/IIMA_Hiroaki/status/412139873101807616)


「「的を得る」が普及してしまったので認めた」ではなく、「(誤用説を)撤回し、おわび申し上げます」ということです。(更に、飯間さんは著書『三省堂国語辞典のひみつ』(三省堂)の中でも誤用説は間違いであったから改めた、という趣旨の文章を書かれています)


もちろん私も、追随した4冊の「国語辞典」を含め、これだけ世間に広まってしまった「的を得る」誤用説が一夜にして消えるとは思いませんが、永らく誤用説の旗手であった『三省堂国語辞典』の「誤用説撤回」は今後の帰趨に決定的な影響を与えるだろうと思っています。

日本で最初に、そして永らく唯一、「的を得る」は誤用であるとしていた『三省堂国語辞典』が、その主張を撤回し、最新版にきちんと「的を得る」を立項したことで、「的を得る」が濡れ衣を免れて復権する日は近づきました。まぁ、もともと濡れ衣を着せた主犯も『三○○国語辞典』だったような気もしますが。

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